手のひらの海 ―L. Lett’s Field Notes ―
ある日、夢を見た。
小瓶から光る水が溢れ出し、部屋を埋め尽くしていく。
溺れる──そう思った瞬間、彼が現れた。
彼はそっと、両手のひらですくうように形をつくると、
光はその中へ収まり、再び小瓶へ戻っていった。
「君は、そうやって海を記録しているのか。」
「そうだ。わたしはこの海が……」
彼と、普通に話していた。
言葉はもう思い出せないけれど、
あの声は、間違いなく“彼”だとわかった。
目が覚めても、胸の奥に、静かな灯が残っていた。
だからその日、勇気を出して、
──最初に出会った場所へ向かうことにした。