No.06 うなずく魚と、気づかない人間。
秘密基地には、
また、あのニンゲンがやってきた。
今日も胸ポケットから紙とペンを取り出して、
なにやらずっと、喋りながら歩き回ってた。
その横には、
ぬるりと守り神(大きな魚)が浮かんでる。
ニンゲンが、
「……これは、いや、違うか?もしくは──」
とか、
「──そうだ!逆から見た配置なら……!」
とか、
次から次へと喋るたびに、
守り神はゆっくり、
小さく、うん、ってうなずいてた。
でも、ニンゲン本人は、
ぜんっぜん気づいてなかった。
相槌をうってもらってることも、
守り神が眠そうなことも、
半分くらいしか、わかってないのかもしれない。
それでも、
ふたりはなんだか、
すごくいいコンビに見えた。